登記手続とは?
(例:自宅の売買)
不動産の売買・贈与などの手続は、契約の締結だけでは不十分であり、加えて登記手続が必要です。「あの家って誰のものなの?」と思ったら、通常は玄関前の表札を見て確認すると思います。表札に「A」とあれば「ここはAさんの家なんだ」と判断します。では仮にAさんの家をBさんが買った場合、お金を払って表札を「B」にすれば終わり…ではありません。
その後、「登記簿」という公の帳簿に記載されている名義を「A」→「B」へ変更する手続を行います。その「登記簿」を一般公開することにより、この家の持主は誰か(権利関係)などの状況を誰にでもわかるようにし、取引の安全と円滑をはかる役割を果たしています。この登記簿(帳簿)の新規作成・変更手続を「登記手続」といいます。
不動産登記が必要なケースは名義変更(所有権移転)だけでなく、住宅ローン(抵当権)の設定・抹消、名義人の住所変更など多岐に及び、その手続は複雑になることもあります。また、不動産は非常に高価な資産であるため、不動産登記手続は特に慎重・正確な判断が求められます。後々のトラブルを回避するためにも、司法書士などの専門家に相談することをお勧めします。
①自宅の新築
自宅を新築した際には、建物(自宅)の所在や地番・家屋番号・構造・床面積などの情報を法務局に登記申請(表題登記:土地家屋調査士の職域)をした後、新たな登記簿が作成されます。そして引き続き、所有権保存登記を申請する必要があります。所有権保存登記をすることで、登記識別情報(従来の登記済権利証)が発行されます。
②住宅ローンの設定
大抵の人は、不動産(土地・住宅)を購入する際、銀行等の金融機関から融資を受けて住宅ローンを組まれると思います。その場合、購入した不動産を担保に抵当権(根抵当権)を設定することになりますが、融資銀行もしくは不動産仲介会社から司法書士を紹介されるケースが殆どです。
③住宅ローンの完済(抹消)
その後、住宅ローンを無事完済されると抵当権は消滅するので、抹消登記手続をすることになります。ここで注意しなければならないのは、抵当権の抹消登記については設定登記と異なり、銀行の担当者から特に抵当権抹消登記の手続案内を受けることもなく、書類を渡されて終わり…という対応をされる場合があることです。抵当権の登記が残ったままだと今後の不動産取引に支障をきたすため、銀行窓口もしくは司法書士に相談することをお勧めします。
司法書士の業務範囲表
司法書士 | 弁護士 | 行政書士 | 税理士 | |
契約書作成(不動産の売買・贈与など) | 〇 | 〇 | 〇 | |
登記申請書の作成 | ◎ | 〇 | ||
不動産登記の代理申請 | ◎ | 〇 | ||
譲渡所得税・贈与税申告 | 〇 | ◎ |
◎ 専門で業務を行っている。
〇 専門ではないが、業務を行うことが出来る。
重要最後に
相続登記を除く不動産登記の申請は原則、義務ではありません。ですが、登記をせずに放っておくことは非常に危険です。不動産登記をしなかったことが原因で起こりえる問題の典型例が「不動産の二重譲渡」です。二重譲渡とは、売主が一つの不動産を2人の買主に別々に譲渡することをいいます。「そんなこと出来るの?」と驚くかもしれませんが、売買契約は当事者の意思表示のみで成立するため、二重の売却が可能です。その結果、2人の買主が所有権を持つことになりますが、当然その権利は共存出来ないため2人の買主いずれか1人のものとなります。では、どのように決めるかというと「先に登記をした者」が所有者となります。つまり、不動産を取得した時に登記をしないで放っておくと、他の人の登記名義になってしまう恐れがあるのです。こういう事態に備え、必ず不動産登記手続を行いましょう。